この石はまだお酒をのんではいけない年齢のころに買ったものだった気がする。
あのころはまだ産地などについてあまり気をまわしておらず、
ラベルなどがあっても放置して、そのうちどこかに行ってしまう。
「石はキレイだから好きなのであって、産地なんてどうでもいいじゃない」
みたいなこころもちがあったのは否定しようもない。
石の魅力にとりつかれたばかりで、いくぶん調子に乗っていた。
今では石に対してすまない気持ちでいっぱいだ。
なにしろ産まれ故郷のデータを失ってしまったのだから。
それでも石オタ続けて○○年。
なんとなく結晶の様子でわかることもある。
たぶんこの子はアメリカ産まれ。
アリゾナ州レッドクラウド鉱山から日本にやってきたのだろう。
板状の具合といい色といいそっくりだ。
なんならgoogle先生の画像検索をするといい。
『アリゾナ州 レッドクラウド鉱山 モリブデン鉛鉱』
で、仲間がいっぱい見つかるはずだ。
今では産地のラベルを捨てるなんてことはしない。
が、それでもこの標本の美しさは損なわれたりするわけではない。
産地を保存するのは、石オタやコレクターのたしなみみたいなもの。
一度失われたデータは、たとえ似ているとしてもそれは似ているだけ。
本当のところは石が自分で語ってくれないことにはわからない。