マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

深度合成という業技

わたしの高倍率接写写真では多くの場合『深度合成』というワザを使っております。
これはPCを使った合成写真の一種で、少しずつピントをずらして撮った写真を、ピントが合った面のみ重ねて合成する技術です。
『多深度合成写真』ともいいます。

そのソフトの多くは有料ですが、フリーソフトで『CombineZM』あるいは『CombineZP』というものがあります。
これは英語のソフトですが『丸山宗利研究室』様で、丁寧に解説をされていますのでご覧ください。
上記リンクより、左側の「CombineZMの使い方」です。
なお、『CombineZP』はインターフェイスを使いやすくした新バージョンです。
わたしも両方試してみましたが、出来上がりはそんなに違わないようです。
それほど重いソフトではないので、両方入れて使いやすいソフトを使うのがいいでしょう。


実際にわたしの作例をお見せいたします。
下記二枚の写真は、こまかーーーーくピントを送った108枚の写真のうち、最初の一枚と最後の一枚の写真です。
rutile
この間に108枚の写真…
rutile
ちなみに108枚はやりすぎです。
わたしもこれは量が多すぎてソフトがフリーズを起こしたため、実際には108枚を四つに分けて合成して、最終的にその四枚をさらに合成するという荒業を使いました。


これを合成するとこうなります。ちょっと色など補正してます。
rutile
ずいぶん被写界深度が違うことがわかると思います。


銀塩時代のころのマクロ写真は、当然このような多深度合成はなかなかできるものではありません。
一般的には限界まで絞り込んで撮影するか、或いはピント面を操れるシフト機能を使える環境を整えるのが普通でした。

けれども、デジタル写真において「絞りすぎ」は強い「回折ボケ」を生んでしまいます
せっかくシャープに撮りたいのに出来上がりはボケボケ。
しかも、高倍率の世界では思いのほかピントが薄いので、なかなか満足のいく写真にはなりません。
デジタルにおける「回折ボケ」についてはまた今度。

そこで今の時代はわたしのようなアマチュアでもこのようにして被写界深度の深い写真を作ることができます。
上の写真はだいたい2cmほどのルチルの結晶を撮影していますが、たとえばこれが2mmとなるとこの合成をしないとそもそも写真として成立しません。


もしかすると「合成」という言葉に嫌悪感。拒否感を持たれる方もいるかもしれません。
わたしもそうした感情がないといえばウソになります。
できればカメラとレンズだけが生み出した写真を撮りたい。
そのように思っています。

が、深度合成を使わないと、高倍率接写写真は成り立ちません。
絞込み撮影であっても、シフト撮影であっても深度合成の被写界深度操作には及びません。

お手持ちに10倍くらいのルーペをお持ちでしたら、近くの立体物をしげしげと眺めるとよくわかります。
平行面に対しては一部分のピントがあっていれば全体像はわかりますが、ごつごつした立体面では肉眼であってもピントが薄くて確認がおぼつきません。

つまり、基本的に高倍率のマクロというのは肉眼では見ることができないのです。

このような世界は顕微鏡を使ってもダメで、深度合成を使ってはじめて対象の全貌を静止画で見ることができます。
学校で顕微鏡を使ったことがある方は、スライドガラスに薄切りにした切片を置いて、うすーいカバーグラスでサンドしていたのを覚えているでしょうか?
あれは、なるべく観察対象を平面にしてピントが全面に合うようにするためです。


[高倍率マクロ=ピントが薄い]
これはもう宿命みたいなものです。
それを知ったとき、わたしの中から合成ソフトに対する拘りが消えました。

また、合成といえども侮れません。
一枚一枚の写真をブラさずに、正確なピント送りで一枚一枚撮影していくのは、そうとうに根気と忍耐のいる作業です。
人的努力もさることながら、撮影台の強度剛性。ピント送りなどは、高倍率マクロをしている人は皆苦労してシステムを作り上げています。
またそれが面白いのですが、とくに被写体に心当たりがない方にはこのジャンルに近づくことはオススメしません。
労が多くて汎用性のないシステムを組むのですから、被写体にこれというものがなくてはシステムを組む意味がありませんから…

そのうちカメラ本体で『深度合成』ができる機能を持った機種も出るかもしれません。
が、わたしが考える限りではまだまだ先というか、望み薄です。

そもそも、高倍率の撮影。というものがニッチな世界であり、ネイチャー系の研究職の方々くらいしか需要がないからです。
そんなものを民生機の機能に盛り込んでも、ウケが悪いでしょうから…

ではなんでわたしはそんなニッチな世界に入り込んだのか?
研究職でもなく一介のオタクがなぜ?

これはもう『業』が深いとしかいいようがありません…
ここまでいっておいてナンですが、かなり面白いですよ!!




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