D610/OPTIPHOT/NIKON M plan 5 0.1 210/0
昨日、雨の道端でナミアゲハを拾った。
捕ったのではなく、拾った。
寿命だったのだろう。けどもその姿が美しかったので、
手近な紙で三角紙を折り、家まで持って帰ってきた。
三角紙というものを見るのも折ったのも小学生ぶりだ。
こんなとき、あんがい昔のことを覚えているものだと思わされる。
D610/OPTIPHOT/NIKON M plan 10 0.25 210/0
一晩、三角紙ごと防湿庫で寝かしておく。
雨に濡れていたこともあるけれど、
標本というのは乾燥させておかないといけない気がした。
そして本日仕事が終わり、家で家事をこなして夜。
ぼんやりとお酒を飲みながら、顕微鏡で蝶の羽を眺める。
D610/OPTIPHOT/NIKON M plan 20 0.4 210/0
死んでなお、蝶の羽はきれいだった。
倍率をどんどん上げていくにつれ、馴染んだ鉱物の観察とは違った感動が増していったた。
何気なくつまんだナミアゲハに、死を感じているのかもしれない。
あるいは、高倍率の薄いピントに幻想を覚えたのかもしれない。
石で肉眼では至れない境地を見てきたわたしには、
この光景はあまりに生々しく生と死を拡大して見せてくれた。
D610/OPTIPHOT/OLYMPUS 40 0.65 0.17
偽りなく本音を語ると、気持ちが悪かった。
虫の生理的嫌悪感ではなく、生き物は死ぬんだという根源的な感情に
これまで高倍率撮影では感じたことのない畏れを抱いた。
蝶の鱗粉。上の画像はすでにマイクロメートルの単位。
気軽に撮影観察していたため、深度合成をしていない。
薄いピントが墓標のように見え、見てはいけないものを見た感じすらした。
D610/Micro NIKKOR 60mm/F2.8G
撮影を追えて、ナミアゲハの全体を眺める。
平気で触っていた蝶の身体が突然触ってはいけないものに見えた。
ピンセットでそっと三角紙に滑りこませ、ふたたび防湿庫に戻し、思わず合掌。
現世ではすでに失われた生命。
すみません、その玉体をしばらく観察で使わせていただきます。
虫に魂があるかどうかはわからないけれども、
五分の魂があるのであれば、きっと生前と同じくどこかを舞っているのだろう。
そう思うと、死してなお軽やかな蝶の姿が、ふたたび美しく見えてきた。
===2015年8月26日 はてなダイアリーからはてなブログに移行しました===
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