赤本導師よりサフラン酒というステキな名前のお酒があると聞き、
どんなものだろうと好奇心に負けて、一本頼んでみた。
この酒。かつては『養命酒』と勢力を二分にしたほどの薬用酒だったという。
同じ天を戴くことはできない、というわけでもないのだろうけど、
養命酒は今でも著名な健康酒。
わたしがこのサフラン酒をこれまで知らなかった不明があるにせよ、
お世辞にもメジャーであるとはいいがたい酒だ。
けれどもメジャーであることが、必ずしもいいことではない。
酒の世界ではよくあることだ。
アルコール分は14%。エキス分は13%。
このエキス分は糖分に等しいとどこかで読んだ記憶がある。
やはりリキュールなので、甘いのは覚悟の上だ。
実は、あまり甘い酒は得意ではないので、
リキュールを一本飲み切ることはあまりなかったりする。
味は…やはり甘い。
だが、養命酒ほどではなく、それに比べればサラリとした甘さ。
ロックにしてみたらちょうどいい塩梅だった。
薬用酒というから身構えていたのだけれども、ずいぶんと軽い。
薬用のある植物で作られるサフラン酒。
サフランをはじめとし、はちみつ、経費、丁子、甘草などの
薬草で味を整えているのだという。
ベタベタした感じがなく、香りも穏やかだ。
ストレートで飲んでも、ロックで飲んでもいい。
たまたま家になかったが、炭酸で割っても間違いないだろう。
導師はベルモットのかわりにどうぞ。ということだったが、
どこまで本気だったのだろう。
ジンで割ったらさぞ風変わりなマティーニになるに違いない。
ひとくち、ふたくちと飲んでいると、なんだか無性に懐かしい味が湧いてきた。
なんだろう。この薄甘い、郷愁を誘うような味…
繊細でちょっとしたものにも埋もれてしまいそうな微香。
ロックの氷が半分以上溶けたあたりでふと気がついた。
子供の頃、学校の帰り道で吸ったサルビアやツツジの花の蜜の味だ。
せっかく咲いた花壇の花を、悪ガキがこぞって群がって散らした、あの味だ。
その味は氷が溶ければ溶けるほど明確になっていく。
薄くなればなるほど懐かしい味が輪郭を増してくる。
サフラン。という名前は伊達ではなかった。
この酒はほんのすこしの花の蜜を一本の瓶に詰めたような、
つつましやかで品のいい甘さのある酒だ。
明治から大正、昭和にかけて咲き誇ったサフラン酒の横に、
わたしは思わずマミヤの二眼レフを置いた。
本来ならば戦前のカメラを配するのが作法かもしれないけれど、
わが家にはそれほどのヴィンテージがない。
しかし二眼レフの佇まいとサフラン酒の取り合わせは悪くない。
レンズシャッターの軽快な音と、すりガラスが映し出す大きなファインダー像。
これを頼りに飲むサフラン酒は悪くないどころか、大いに結構なものだった。
身体だけでなく、心の健康に一本のサフラン酒。
追記:
タンサンで割るとすばらしく美味しいことが翌日判明しました。
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