『IKEA』というとわたしの中では北欧の家具屋であった。
けれどもそこで何故かザリガニが食べられる。というので密かな興味を抱いていた。しかも期間限定とのこと。今年は最終日にザリガニ星人を食べて駆逐してもよいという名乗りを上げた聖戦士が、埼玉県は新三郷に集結した。
この緩い顔ハメ看板…
ザリガニといえばわたしの中では子供時代、水路やら川やらでイカを使って釣った思い出しかない。食べる者がいるということを知識して知っていたが、この看板で「そういう食文化があるんだ」と強く認識させられた。
スウェーデンにおいてザリガニは珍味として評判高く、高級レストランで供されるほどの食材だった。しかし19世紀の初頭になると乱獲により絶滅に瀕し、ザリガニ漁は8月と9月の2ヶ月のみとされた。
なるほどIKEAは家具のみならず自国の食文化を日本へと紹介しているのか。ザリガニは日本でも知名度は高く、馴染みも早いと考えたのであろう。駆逐するだなんてとんでもない。旬のおいしさを満喫しよう。
というわけでザリガニ料理をメインにずらりとスウェーデンの味を机に並べてみた。
ザリガニご賞味隊はわたしを含めて三人。10人ほど共通の友達らに「ヘイ! 今度ザリガニを食べに行かないかい!?」と水を向けたのだが、ザリガニと聞くと露骨に嫌そうな顔をされてしまった。なぜだ。
ザリガニプレート(3匹)で349円とリーズナブル。ただし食べる場所は少なく、素手でバキバキと殻を向きながら、希少な身をほじくり出していただく。レモンがついているのでこれは絞っておくべき。
というのも、素手で殻をむかなくてはなので、指がザリガニ臭くなる。レモンを絞っておくとそれが緩和されるのだ。ザリガニの味はレモンごときではぼやけず、濃厚で野趣あふるる。おいしい。エビというよりはシャコに近いか。
三人でザリガニ塚を築き上げる。
このIKEAレストラン。なにげにすべてがリーズナブル。このカレーがなんと299円。最後にちょっと味が気になるからと頼んでみたら、これがなかなかのボリューム。
値段から平皿にちょこっと盛ったものかと思ったら、なんと皿がすり鉢状の深皿。これひとつでも十分な量であったので苦戦した。
ザリガニ以外でいいなと思ったものはスウェーデン・ミートボール。ミートボールにマッシュポテトとグレイビーソース。そしてラズベリーソースを添えたもの。日本ではちょっと味わえない風味だ。
満腹になってしばらく『IKEA』をぶらぶらとするが、ここはなんというか日本ではないみたいだ。家具屋ということで今まで興味がなかったけれども、家具といってもインテリア雑貨などもある。北欧デザインのそれらが並ぶ空間は、まるでテーマパークにいるかのような気分だ。
一階にはビストロ、という軽食を扱う場所があり、ここがまたすごい。なんとホットドッグひとつ80円(税込み)だ。他にもソフトクリームひとつ50円。ドリンクバーが70円。予想外の衝撃に写真を取り忘れたが、ホットドッグは80円とは思えないクオリティだった。
わたしは+20円で100円のホットドック+ピクルス&フライドオニオン乗せ放題にしたが、こんなの近所にあったら毎日通うわ。という具合いであった。
1Fには北欧の食材も販売しており、レストランやビストロで使っている食材そのものすら販売している。この感覚もなかなか日本ではお目にかかれない。
わたしはそこでエルダーフラワーのジュースと『スナップス』というブランドのアクアビットを購入。今日の晩酌にいただこう。
当初の思惑を超えて『IKEA』のザリガニ飯は楽しいものとなった。気がつけば三時間以上も店内を皆でぶらついていた。
「ザリガニは毎月食べるようなものではないけれども、また来年に来よう」
そう約束を交わし合うのであった。
わたしはたぶん近いうちにこっそりホットドッグを食べに行くと思う。
===おまけ===
『IKEA』で買ったアクアビット。一口ストレートで飲むと口の中に香水のような香りが。
[↑ザリガニのオスメスを見分けられるようになった(ﾒｽは卵を抱くので足が長い)]
