マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

双眼鏡を買った。賞月観星『Pleasing HR 8x32 WP』

わたしはマクロ撮影が好きで、望遠レンズというカテゴリはそれほど興味がなかった。というよりも、被写体という意味で、望遠レンズを使う必要に迫られなかったから。というのが正しいのかもしれない。

なのでこれまで買ってきたカメラレンズ意外の光学系は顕微鏡であったりルーペであったり、近接での観察ができる双眼鏡のパピリオ2であったり、五藤光学の単眼鏡であったりした。マクロ。ないしミュージアムなどで対象に近寄ることができないものを観察するためのツールであった。

しかし考えてみるとマクロは近いものを拡大して写す。望遠は遠くのものを間の前に引き寄せるように写す。いずれも思想としては「細部を観察したい」ということで、とても似通っている。望遠マクロ、という言葉だってあるのだ。 

そんなわたしが近接観察ができない、8倍の双眼鏡を購入してしまった。

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

賞月観星『Pleasing HR 8x32 WP』。

なぜこれを買うに至ったか。話せば長くなる。

新型コロナウイルスで数ヶ月ほど自宅勤務をすることになり、さすがに気分がふさぐことがある。ふと心を慰められるのは、窓から流れてくる外の音だ。車の排気音、子供の遊ぶ声、雨の音。いちばん心を慰められたのはスズメの鳴き声だった。

営巣の時期のせいか、朝から昼にかけてチュンチュンとかわいい声を耳にしているうちに、どこかにスズメが巣をかけているのかな? と、ベランダに出て周囲を探ったところ、あんがい身近なところにこっそり巣を作っていた。

わたしが持っている双眼鏡、単眼鏡は上記に挙げたパピリオ6.5倍と、五藤の5倍。そしてすこしカビが回っている微妙に古いニコンの双眼鏡。『10x25 AS』という入門機だけだった。

パピリオでは倍率が物足りなく、ニコンのAS10倍の倍率はいいのだけれど、カビのせいもあって見えが悪い。

観察をしてみるとスズメは二匹。いつも交互に口にエサらしきもを咥えては巣に潜り、また飛び立っていく。子育て真っ最中なのだろう。

というわけで、スズメの子育てから巣立ちまでを見たかったんだ…

なぜ賞月観星というメーカーにしたのか? それはブログが面白かったから。

双眼鏡の知識なんてゼロに等しかったわたしだけれども、楽しく読み通してしまった。こんな人が販売している双眼鏡なら、ひとつ買ってみよまい。という具合だ。なにしろグレードに反して販売価格がとてもお得であったのも大きい。

 

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

そして届いた双眼鏡の箱。…うん、これは購入品ではない双眼鏡の写真ですね。おそらく箱は適当なOEMのものなのだろう。激安のわりに性能がいいと噂の『SVBONY SV21』もこの箱を使っていたようだ。

でもまあ双眼鏡の見えがよければいいんです。というわけで同梱品はこちら。

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

本体にキャリングケースにストラップ。そしてレンズクロス。前後キャップつき。後述するけれども、スマホ撮影ができるアダプターと、三脚アダプターも購入してみた。

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

買う前から気になっていたポイントではあるんですけど、「ED」のロゴが強烈にダサい!!

ピントリングのノブに「ED」も含めてしまい、ここは無地にすればよかったのに!! あと1000yds(ヤード)369ft(フィート)の単位表記がメートルではないあたりにメートル法文化者としては違和感を覚えるがまあそこは許せる。

なお1000ヤード= 914.4メートル。369フィート= 112.4712メートルで、これは1000ヤード先のものが396フィートの視野で見えますよ。という意味。公式のカタログスペックでは実視界:7.6°(見掛視界:60°)とのこと。

Pleasing HR 8x32 WPの面白いのはコーティングの色。角度によって紫を噛んだ赤いコート。安い双眼鏡や大昔のレンズには単層のマゼンタコートがあるけれども、これは「サクラコート」というれっきとした多層膜コーティング。マルチコーテングなのだという。

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

『Pleasing ED』という双眼鏡が目指したのは「カール・ツァイスの伝統的な見え方」を再現するためという題目を謳っている。残念なことにわたしがツァイスの双眼鏡を覗いたことがないのだけれども、たしかにツァイスの双眼鏡のコーティングも赤紫や青紫であることが多いようだ。

BaK4プリズム、フルマルチコート、窒素ガス充填、位相差補正コーティング、フラットナーレンズ、EDレンズ使用と全部入り。これで2万円くらいというのはお得だ。と、双眼鏡のことはまだ何もわからないわたしにも、納得させられてしまうラインナップ。

実際に見え方はとてもいい。こんなギラギラしたコーティングだけれども、接眼レンズから垂直に覗き込むと世界が一気にクリアになる。水の中にいるかのような透明さだ。

何がツァイス的なのかはまったくわからないし、比較すべき双眼鏡も手元にない。五藤の単眼鏡やパピリオ2はそもそも倍率が違うし、古いニコンはカビ玉だ。

ベランダに出て眺めるスズメたちの細部は表情や咥えたエサまでよく見えるし、軸上色収差もまず見当たらない。倍率色収差は条件によってはごくごくうっすら見える。観察において気になることはない。

周辺もよく見える。というより双眼鏡で周辺まで見える、というのはあまり意識しないんじゃあないかなあ。と双眼鏡素人が感じた点。構図こみで記録するカメラと違って、自分が観察したいものはセンターに持ってくるのだから、中心の見え方こそが大事なのではと思う。

そうした意味で、中心はビシッと改造して周辺がわずかい甘いくらいが、写真レンズでいうところの周辺減光やボケ味のような効果が出てくるのでは。

みたいなことを考えて双眼鏡を覗いてみると『Pleasing HR 8x32 WP』。わずかに中心よりも周辺がふんわりしている。もしかしてこれが「ツァイス的な見え方」というやつなのだろうか。

 

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

あの微妙なEDマークを外すと三脚ホルダー用の小ねじ穴が出てくる。それをこうしてマウント。実際はベランダの手すりにクランプ三脚を噛ませてスズメや空を観察していたけれども、これはいいものだ。手持ちより抜群に像がブレないぞ。

なおこの三脚ホルダー。ワッシャーが一枚入っているのだけれども、これが装着時によく落ちる。しかもこれがないと双眼鏡がきちっと固定できない。なのでGボンドでワッシャーを固定してしまった。これでひとまず安心。この三脚ホルダーの出来は、あまりよくない。

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

スマホホルダーもある。

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

これは双眼鏡の接眼レンズを締め付けて固定して、スマホレンズを任意の位置で合わせて固定する、いわゆるコリメート撮影のためのアダプターだ。

スマホを固定する締め付けのネジと、接眼部を押さえる爪を押さえる回すところの動きが実にしぶい。なのでシリコーンスプレーをちょこっとだけ塗布したらずいぶんマシになった。

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

ただ、スマホアダプターでの撮影はどうもよくない。もともとのスマホで使っているレンズのと素子の性能に左右されるため、何度か使ってみて興味が薄れていった。撮影するなら素直に望遠レンズとカメラで撮るべきだ。

双眼鏡はあくまでその場の観察のためだと強く感じた。だがその分カメラレンズと光学ファインダーで覗いた対象よりも、双眼鏡のほうがふたまわりくらい色や輪郭が美しく見える。

賞月観星『Pleasing HR 8x32 WP』。とても気に入った。ダハプリズムの双眼鏡は始めてだけれども、とても軽くて扱いやすい。昼のまぶしいところでも、夜の薄暗いところでも等しく明るくシャープに観察できる。

残念ながらこの双眼鏡を買ってから天気に恵まれず、月も星も鑑賞できていない。本当なら夜空の天体を眺めてからレビューしていきたかったのだけれども、始めて覗いた良さを覚えているうちにと思い、先走りなレビューを描くことになってしまった。

しかし東京上空を行くブルーインパルスの編隊飛行はたまたま見ることができた。家のベランダからスズメと戦闘機を眺めるというためだけでも、この双眼鏡は買ってよかった。そしてこれが双眼鏡沼の深みへと続かないよう、祈るばかりで…

 

[おまけ]

賞月観星名物、発送用ダンボールアートペイント。

賞月観星 Pleasing HR 8x32 WP

困るなあ…こういうの捨てられない…(切り取って保管)

 

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