マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

時代遅れの接写拡大撮影

カメラの世界には『等倍』という言葉があります。

たとえばわたしの使っているD90では、
フィルムに相当する撮像素子の大きさが、
22.3mm×14.9mmの長方形です。

ここに、同サイズ22.3mm×14.9mmの大きさの被写体がまるまる写る。
これが『等倍撮影』となります。
レンズのどこかに「1:1」とあればそれは等倍撮影のできるマクロレンズです。
とはいえ「マクロレンズ」は厳密な呼び名ではなく、
各社で呼び名や接写性能が違うのでご注意ください。

ひと昔前だと「マクロ」とえば「1:2」の「ハーフマクロ」が主流で、
こちらは22.3mm×14.9mmの素子に
44.6mm×29.8mmサイズを画面いっぱいに写せるということです。

ズームレンズでも「macro」の文字があることがありますが、
こちらは俗に「なんちゃってマクロ」と呼ばれるもので、
あくまでズームレンズのオマケ程度に考えておいたほうがいいでしょう。
石を撮るにはてんで向きません。
(例外=zoom micro nikkor)

マクロレンズを導入される方は、大きく写したい方が多いでしょうから
やはり1:1表記の等倍か、ハーフまでのレンズをオススメします。


しかし、これからご紹介するのはいわゆる「マクロレンズ」として売られているものではなく、
「引き伸ばしレンズ」というものを使っての拡大撮影です。
ベローズという蛇腹装置で等倍以上のマクロ撮影が可能になります。
AFもAE(上位機種ならAEはOKの場合もあり)も利きませんし、扱いも面倒。なによりすでにメーカー販売を終えているものが多い。
そんなシロモノですのでご注意ください。

使うレンズはこちらです。
【EL-NIKKOR 50mm F2.8(旧/新)】
Enlarging lens

これはアナログ写真を大きく引き伸ばすときに使う製版レンズで、
ヘリコイド。ピントをあわせる機構を持たず、絞りの羽しかないレンズです。
いずれも同じニコンの同じ焦点距離とF値のレンズですが、
左が古いほうで右が新しいほうです。

引き伸ばしレンズはアナログの写真の四隅までをすみずみ拡大して写すため、
色や像の収差を高いレベルで計算して補正してあります。
そう、ここはマクロレンズと同じ設計思想ですね。

ただしこれ単体ですとどうしようもありませんので、
ベローズという蛇腹状の装備が必要となります。

【NIKON PB-5 ベローズ】※下部がちょっと壊れて補修してあります
PB-5 bellows

これがベローズと呼ばれる接写装置です。
いつもはPB-6を使用しているのですが、
PB-6はメイン撮影のために撮影台に組み込んであるので、
軽量でよりメカメカしいPB-5を紹介いたします。

詳しい理屈を知りたい方には申し訳ありませんが、
ざっくり説明すると先端にレンズをつけて後ろにカメラをつけます。
そしてその中間の蛇腹を伸び縮みさせることによって、
撮影倍率を操作することができます。
蛇腹を伸ばすと、より拡大して撮影することができます。

ただし、こちらのベローズはニコンのFマウント。
引き伸ばしレンズのほとんどはM39という、
ネジ径が39mmのネジマウントとなります。

これらを接合するためにマウントアダプタが必要となります。

【M39→ニコンFマウントアダプタ】
Adaptor


これでひとまず拡大撮影に必要な装備は整いました。

組み上げるとこんなカンジになります。

レンズとマウントの向きは違いますが、
前出の藍銅鉱はこのような装備で撮影したものです。
(深度合成ソフトも使っていますが、こちらの説明はまた今度)

また、ベローズは手に入りにくいし重くて面倒という方には、
チューブ。あるいは中間リングと呼ばれる接写装置がオススメです。

Adaptor ring

これは各社が出していて、値段も手ごろですのでひと揃えあっても邪魔になりませんし、
ベローズマクロのときにも別途使い道があるのでオススメです。

これにもアダプタが必要ですが、こんなカンジになります。
ただし、拡大倍率もピントも固定なので、著しく撮影自由度は下がります。


ベローズについてですが、これはもうメーカー純正では販売終了していて、
手に入れるためにはネットオークションやカメラ屋で中古を買うしかありません。

どうしても新品が欲しい方は、中国製の汎用ベローズがありますが、
こちらは耐久性や質感といった点からオススメできません。
一度カメラ屋さんで手にとらせていただいたこともありますが、
中古のメーカー純正の良品を探すことを強くオススメいたします。
ニコンをお使いの方でしたら、PB-6がオークションで1万半ばでまだ在庫があるようです。
根気よく探せば、もっと安価に落札することも可能でしょう。

引き伸ばしレンズですが、こちらもニコンのものは販売終了です。
こちらは銀塩写真の引き伸ばしをやめた方が、
現在オークションに出されることが多いので(一部を除いて)今なら格安で入手できます。
上記のEL-NIKKORでしたら状態にもよりますが、500〜3000円くらいでゴロゴロしています。

また、「どうしても新品がいい!!」という方でしたら、
フジが現在も引き伸ばしレンズを販売しています。
こちらは確実に万を超えてしまうのですが、
現在の「EX」レンズの描写はかなり優秀です。
以前紹介したビスマスの人工結晶は、フジの90mmEXレンズで撮ったものです。


ベローズも引き伸ばしレンズも失われつつある装備です。
それを使って撮影するというのはある種の回顧主義に見えるかもしれません。
ですが、接写撮影をやっていくと、等倍以上の拡大撮影をしようとすると、
ほとんど選択肢がないことに気がつきます。
とくにアマチュアが手を出せるシステムは皆無に等しいです。

上記に紹介した機材は、わたしがネットで知り合った先達の方から教えていただき、
自分でもあれこれと試行錯誤してたどり着いた結論のひとつです。
わたしもまだデジカメ歴は3年ほどであまり大きなことはいえませんが、
これらの紹介がネット海をさまよう皆様にお役に立てれば幸いに思います。

わたしは石を撮りたい一心でマクロシステムを追い求めてきましたが、
ふつうはここまでやろうとはしません。
これは遠まわしなオタク自慢ではなく、マクロ撮影はそうとうニッチな世界だからです。

まず、興味のある被写体が身近にないと続きません。
たいていこれらのシステムを組んだ方は、
10円玉や時計の文字盤。髪の毛や植物のタネ。
そうしたものを何枚か接写してお蔵入りになってしまいます。
なぜかというと、もともと撮りたい被写体がそれほどないからです。

もちろん純粋に「高倍率のマクロ撮影がしたい!!」という方が、
ここからマクロにはまることもあると思いますが、
そういった方はごくごく稀な例だということも書き記しておきます。
安くないシステムを組み上げてお蔵入りではもったいないですから、
上記のシステムはかなり安い組み合わせで、
かつ通常のマクロ撮影もできなくはないというカンジものを紹介しています。

この手の高倍率マクロにどっぷりハマる方は、
あらかじめ被写体の都合がある方でしょう。
わたしは石屋(石好き)ですが、花屋さんや虫屋さんなどが高倍率マクロの常連です。

なので、まずは通常のマクロレンズの購入をオススメします。
そこから拡大倍率に物足りなくなったら、この日記を思い出していただければ幸いです。
必要に迫られた人は、まず間違いなくこちら側に来るので安心してください。
できればニコンFマウントにてお会いいたしましょう(爆)!!


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