マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

NIKON MUSEUMに行ってきた

品川駅より歩いて数分のところにある、『品川インターシティ』。

ニコンミュージアムはここのC棟に現れた。

2017年に100週年を向かえる光学業界のトップブランドは、

それにむけて着々と盛り上がりを増しているようだった。

 

わたしもニコンファンとしては一度参拝しなくてはなるまい。

というわけで、閉館二時間前くらいに飛び込んで、

カメラの。光学の歴史の一端に触れてました。

 

品川インターシティはニコン本社のお膝元。

本社受付わきということもあり、構えは若干入りにくいものの、

入ってしまえばなんということはない。

受付はあるがこちらは社用の者が利用するところで、

ミュージアムにはとくに入場に関するゲートなどはない。

どしどしと進んでいこう。

 

入る際には常識的な注意がいくつかある。

撮影は基本的に許されているものの、一部撮影禁止のものがある。

またフラッシュはご法度。鑑賞をしている方の妨げになってはならない。 

ここらへんの注意は入り口すぐわきに箇条書きしてあるので、

おのおのご一読ということで。

基本的に撮影OKというのがじつに嬉しい。

 

中に入るとマンガに出てくる大砲の玉みたいなガラスインゴットがドン。

NIKON MUSEUM

おさわり自由ということなので、力いっぱい触らせてもらう。

頬ずりまではしないのが大人のマナー。

NIKON MUSEUM

ここからレンズ素材を切り出して、ニッコールへと変わっていく。

いわばニッコールの種といっても過言ではない。

NIKON MUSEUM

ピントをレンズ先端に合わせる。

この窓から覗き込む世界の美しいこと…

存在するのに存在していない。

透明というのは考えてみれば不思議なものです。

この光学ガラスはいつまでも見ていられる魅力がある。

 

 

NIKON MUSEUM

こんなものもあった。特殊な素材を使った硝材の原形だ。

石英ガラスに人工蛍石。

石オタでもあるわたしはニッコリしながらこのブースの前を

動物園の猿みたいにぐるぐると回り続けていた。

NIKON MUSEUM

とくにこの、きれいに劈開で割った八面体。

無色のこのサイズのフローライトなんて、

合成とはいえいくらするのか想像ができない。ほしい。

NIKON MUSEUM

ベリッシモほしい。

ニコンが人工蛍石を生産したのは2001年と思ったより最近だけれども、

それ以前から産業用のニッコールでは石英ガラスも蛍石ガラスも使われている。

紫外線を透過する硝材で作られた特殊用途レンズである、

UV-NIKKOR 105mm F4.5Sなどは1997年にはすでに発売されていた。

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そうそう、こういうレンズです…

と、ミュージアムを歩いていると何気なく一般レンズに混じって、

UV-NIKKORがあるあたり、選定にあたった学芸員の方も人が悪い。

NIKON MUSEUM

一度どれだけの性能を秘めているのか、試してみたいレンズのひとつ。

が、これは産業用ニッコールの中では比較的早くに存在と性能が広まり、

マニアの間で産廃落ちの争奪戦となってしまった。

今では高沸して、わたしにはとても手が出せない値段に…

 

このコーナーにはどういうわけか、同じスペックのふたつのレンズが置いてある。

Micro-NIKKOR 105mm F4だ。

NIKON MUSEUM

NIKON MUSEUM

学芸員の挑発を感じずにはいられない。

最初の一枚は初期型のAiマイクロニッコール105/4。

本来このシリアル(175830)のものは非Aiであるはずだけれども、

これには純正のAi化が施されている。

鏡筒からマウントにかけてキュッとくびれたスタイルがキュート。

 

二枚目はシリアル236660。Ai-S化しているマイクロニッコールだ。

しかしこの個体の販売時期は1981年9月から1983年の4月までと短い。

その後はF値が2.8と明るくなったマイクロニッコール105/2.8へと

役目が引き継がれていった。

なお、驚くべきことにこのAi-S Micro-nikkor 105mm F2.8は現行品だ。

ニコンの歴史はいまなお継承され続けている証左といえる。

 

この最後期のマイクロニッコール105/4は、

フォーカスロック機構があるのも大きな特徴の一つ。

展示の正面からでは見えないが、裏側にまわれば可愛らしいノブが見える。

NIKON MUSEUM

ニコンミュージアムの学芸員が仕込んだであろう、

こうした小粋な仕掛けがいくつあるかわからない。

わたしがいえることは、一度や二度の来館では発見し尽くせないということだ。

 

 

NIKON MUSEUM

これが見たかった。日光流マクロ者のご神体。ウルトラマイクロニッコール。

しかもこれは伝説クラスのUltra-Micro-NIKKOR 29.5mm F1.2だ。

わたしが行けなかった小穴純展で展示されてからというもの、

一度お目もじ叶いたかったレンズのひとつだ。

 

どこがどう伝説なのかというと、小説『チャタレイ夫人の恋人』全ページを、

切手サイズのマイクロフィルムに封じ、

かつその封印を解いて原寸表示できる拡大縮小光学。

下記写真はそのほんの1ページだけども、すごさは伝わるに違いない。

NIKON MUSEUM

NIKON MUSEUM

NIKON MUSEUM

NIKON MUSEUM

伝説。というのは多少表現が正しくないかもしれない。

この解像力はもはやマクロ者にとって神話といっていいだろう。

マクロ神話の時代が現代に降臨している。

これだけでも見に来る価値はあるというものだ。

 

 

マクロレンズとはちょっと毛色が違うが、こんな実証実験コーナーがあった。

NIKON MUSEUM

手前がナノクリスタルコートの最新のニッコールレンズ。

AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G。

その奥がノクトニッコールと呼ばれる当時の技術の粋を集めて作られたレンズ。

AI Noct Nikkor 58mm F1.2。

いずれのレンズも周辺画質におけるサジタルコマフレアを極限まで抑えこむべく作られた。

 

このふたつのレンズを星空に見立てた点光源で、

実際に見てしまおうというレンズを丸裸にするようなブースだ。

NIKON MUSEUM

 

接眼レンズにレンズを接近させて撮ったものなので、

実際の見え方とはずいぶん違うことはお断りしておきたい。

なお、レンズはAi-S Micro-NIKKOR 60mm F2.8G。ボディはD610。

絞りは解放で撮影している。

NIKON MUSEUM

NIKON MUSEUM

 

ふたつの写真は顕著な違いが見て取れる。

しかしここでどちらがどちらかを明かすのはやめておきたい。

本来であれば、実際に見た者がそれぞれ判断すべきなのだから。

 

わたしの滞在時間は90分ほどだっただろうか。

あまりにも短かった。

オープン初日。列の先頭に立って入った方が、

その日最後に退館した人物であったという。

今ならその気持はよくわかる。

 

恐るべきことに、ニコンミュージアムの入館料は無料。

タダなのだ。

日曜祝日は休館日であるが、土曜はオープンしている。

営業時間は2015年10月21日現在で、10時~18時(最終入館は17時30分まで)。

ここらは変動があるかもしれないので、公式サイトから確認してもらいたい。

 

 

NIKON MUSEUM

受付前は胡蝶蘭で埋め尽くされていた。

この花がしおれる前に、また来よう。

 

 

==おまけ==

NIKON MUSEUM

ニコンミュージアムには各種ニコングッズも販売している。

入館料が無料ということなので、その分グッズ購入に充てるのは

ニコンファンとしては当然の流れだった。

トートバッグとニコンようかん。あわせて1900円。しかも税込み。

映画の一本を見る以上の楽しみを与えてくれ、こんなおみやげまでついてくる。

そう考えると嬉しさがこみ上げてくる。

ニコンようかんをちょっといい宮崎産の緑茶で味わいつつ、

わたしはこのブログを書いている。という具合だった。

 

 

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