埼玉県の上福岡というところにたいそう美味な料理やがあるということで、我々は調査に行くこととなった。というか、すでに何度も足を運んでいる某氏たちの導きだった。
食については鬼気迫るところのあるふたりの紹介であったので、どんなところかと楽しみにしていた。
駅からそれなりに離れた地元民しか通らないようなところを通っていく。どうしてここを見つけたのかよくわからないが、某氏いわくセンサーが働いたとのこと。先行く某氏の背を眺めながら初回組が
「そのとき何か仕事でつらいことでもあったのかな…」
と囁きあっていたことは聞かれていないと思う。
店の名は『桃はな』。
カウンター席がメインで、奥に小さな座敷がひとつという小料理屋。
もう結論から入るけれども、たいそう美味であったので近くの方は行くべし。
フグ刺しのおいしさは別格。日本酒や焼酎と合わせるなら最強かもしれない。白身のおさしみの中でわたしが一番と思うのはカレイなんだけれども、酒と合わせるならという前提ではフグに譲るかもしれない。
特筆したいのはジャガイモのすりおろしたものに鴨肉の叩いたのを入れて、上から黄身をかけて蒸し、それにあんをかけたもの。ジャガイモを崩して鴨肉と鰹だしの効いたあんとからめて食べるのは絶頂もののおいしさでしたね…
ウドと白魚の卵とじも旬のものでたいそう美味でした。春の訪れを感じるという表現は陳腐だけれども、ウドの香気にはそれを感じずにはいられないし、小鍋で火を通してふっくらした白魚の繊細な味は日なたの安らぎすら覚える。
酒もいいのが揃っている。わたしはハイボールで喉をさっぱり潤してからは焼酎ロックをメインに飲み、最後ににごりの日本酒で〆た。佳酒が揃っているので酒を飲まずにはいられない。
ここはハイヤームではなく若山牧水で締めくくりたい。
「それほどに
うまきかと
ひとの問ひたらば
何と答へむ
この酒の味」
『桃はな』
[↑でもウチから遠いぞい!!]