マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

石好きによるルーペ紹介⑥『Carton 宝石鑑定用ルーペ カリナンPRO 10x』

Carton Achromatic loupe 10x

↑いきなり当該ではないルーペです

カートン製のルーペの付き合いは長く、いちばん初めに手に入れたルーペは確か1000円くらいの片持ち繰り出しルーペ。それはもう手元にはなく、酷使した結果レンズのふちは割れ、曇り、カシメはまったくカシまなくなっていた。どこかのミネショの帰りに、落としてしまった。

そして次に手に入れたのはこのカートンのアクロマチックルーペ。コーティングレンズでけっこう使いやすく見やすい部類だった。一見きれいに見えるが、雑に扱ったせいで後玉の凹レンズのコーティングがはがれ、そこに曇りが生じている。

その後、いくつかの適当なルーペを経てカメラのレンズ沼に沈み、その流れからベロモの10倍に出会いルーペ沼にも沈んでいった。

もう10倍ルーペはミネショに連れていくのはベロモ。家でじっくりルースを見るときはニコン。机の上でスタンバイしているのはツァイスともう完璧な布陣なのではと思っていた。そんなわたしの小耳に挟まってきたのは「カートンのカリナン。というルーペがすごいらしい」という噂だ。

Carton Triplet 10x 『Cullinan Pro』

何度かWEBショップなどで目にしていたのだけれども、実際に手にしてみて驚いた。一流しか持ち得ないケースの質感があった。プラスチック製ケースなのかと思いきやまさかのアルミ製。塗装はさらっとしたマット仕上げ。

手に持ってみて質感に驚き。繰り出してみてまた驚く。この突出した部分がレンズを片側にしか繰り出せないようしているのだけれども、ケースを親指と中指でつまんで人差し指で軽く押し出すとクッという軽い抵抗を残してサッと開く。驚きの使いやすさだ。片手の三本指でサッとルーペを展開できるのは、ここまで紹介してきたルーペの中ではケースに指が入る厚みがあり、両側に繰り出せるベロモと池田レンズくらいだ。これができるととっさの展開に大きな差がでる。しかも、他のレンズと比べて圧倒的に使いやすい。

Carton Triplet 10x 『Cullinan Pro』小さなストラップホールは賛否分かれる。いわゆる携帯やスマホに使うようなタイプのテグスのストラップであれば使える。太いひもは使うことができない。ストラップ部分が噛み込まないようにスリットが入っているのもうれしい。ハンドリングにおいてはこのスリットがあるおかげで滑り止めにもなっている。

ケースは全面マットブラックなのでレンズの内面反射対策にもなっているが、要は見え方だぜ…見え方。光学性能をチェックして三度驚く。まさかと思ってベロモとツァイスとニコンのルーペを代わる代わるチェックする。わたしの目にはわずかにカリナンが勝っているように見えた。

気ままなチェックだと腕の産毛などを見るのだけれども、厳密なチェックをしようとするときはもちろん諭吉ベンチだ。

 

本来は高倍率マクロ撮影のベンチマークとして用いられる一万円札のホログラム部分。ここの「NIPPON」の文字を解像させるのが諭吉ベンチだけれども、さすがに10倍ルーペではおぼつかない… しかしお札というものはマイクロ文字の宝箱。さまざまな文字を見比べて、わたしは「カリナン」が手持ちの10倍ルーペ最高の解像力を持っていると結論した。

これはすごいルーペだ。現段階でこれはほぼ究極の10倍ルーペだといっていい。値段がやや高いがツァイスよりはわずかに安い。レンズ径は大きくほぼベロモと遜色ない。堅牢でハンドリングがよく無双の解像力。質感もすばらしい。

けれども大きな弱点がひとつ。ロゴデザインが強烈にダサいのだ。

Carton Triplet 10x 『Cullinan Pro』

表側は標準と斜体の混じるレイアウト。なぜか「TRI」だけが大きい「TRIPLET」のロゴ。謎の横棒。そして裏には微妙なデザインフォントにやはり斜体で「Made in Japan」… これはデザイナーではなく社内の適当な人材にロゴデザインをさせてしまった感のある、世にいう「デザイナーが見ると血を吐いて死ぬ」デザインだ。ダサい。ダサすぎる。あまりルーペの悪いところを取り上げるのはしたくなかったのだけれども、性能面で非の打ち所がないのにこのデザインはあんまりだ。

まだ初めに紹介したアクロマチックルーペのほうが用具の美がある。なぜこんなひどいことを。

あちらを立てればこちらが立たない。というのはどんな世界の頂点でも起こることだけれども、まさかこんなところで立つ瀬がなくなるとは。

小さなことではあるが、現時点で公式サイトには「レンズはコーティングなしの完全対称型の三枚貼り合わせを採用」とある。だが、白い光源でレンズを様々な方向から反射光を調べると、グリーンとパープルの反射がある。これはマルチコートの特徴で、ノンコートレンズである池田レンズやニコンの10倍では絶対に見られない反射光だ。これについてはCartonの表記間違いなのではなかろうか?  あるいは古いバージョンではノンコートで新しいものがコーテッドなのだろうか? まだまだ検証が足りない。

最後に溜まりに溜まった鬱憤を吐き出してしまったが、わたしが使った10倍ルーペの中で「カリナン Pro」は最高のルーペだ。もし安くなくともいい。誰もが知るブランドでなくともいい。デザインにも目をつむろう。とにかく使い勝手と見え方を求める人がいるのであれば、このルーペを検討しないのはもったいないと断言できる。

Carton Loupe 10x

 

【まとめ】
カートン宝石鑑定用ルーペ カリナンPRO 10x

レンズ径=17.5mm(実測)
重量=40g(実測)
全長=43.5mm(繰り出し前/実測)
厚さ=25mm(実測)
レンズ構成=トリプレット

・観察しやすさ=97点
・解像感=98点
・扱いやすさ=97点
・耐久性=96点
・コストパフォーマンス=94点
・総合点:96.4点

 

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[カリナン。という名前がまたいいっスね~]

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