マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

「結晶美術館 厳選版」を読んで

「結晶美術館 厳選版」

「結晶美術館」のだぶさんが薄い本(同人誌の隠語)を出したというので一部いただく運びとなった。100ページフルカラーの厚くて薄い本は「東京化学同人」から出ている月刊「現代化学」に掲載されたものの厳選版。偽らずにすばりいうと、科学の素養が中学生で止まっているようなわたしにはハードルの高い専門月刊誌だったので、こうして一冊にまとめてくれたのは嬉しい。

わたしは鉱物好きでそれを撮影するのも大好きないちマニア。そんなわたしの視点からの感想を交えて、この本を強くオススメしていきたい。

内容は写真と文章が見開き一話完結の四章で構成されていて「元素」「有機無機化学」「鉱物」「結晶学」から成っている。

通常の鉱物テーマの本や図鑑と大きく違うのは、ガチの研究職の人であり、ガチの高倍率マクロ撮影の人が文と撮影をひとりでやっている。というところ。文と写真にただごとではない一体感がある。

「元素」の章では数多くの金属元素の人工結晶が撮影されている。実際この本の半分がここに割かれている力の入れよう。

金属鉱物の撮影というのはとても厄介で、ちょっとでも光の当て方をしくじるとハレーションが出て写真が破綻する。とてもわたしらしい見方だとは思うのだけれども、よくぞこのサイズのものをこの水準で撮れたなあとため息が漏れる。「厳選版」は伊達ではなくて、どの結晶もフォトジェニックだ。鉱物としての美しさがあるので、わたしみたいなただのマニアでも見どころが多い。

序文に「大学学部の化学程度の基礎知識を必要とするが」とあるけれども、高度だなと思うのは「――グリニャール試薬としてアニオン的な有機基導入に使用される」といった流れ上説明しなくてはならないと思われる部分であって、門外漢はなんだったらそこを飛ばして読んでもいい(暴言)。こういうのは最小限で、多くは鉱物やその歴史的な興味があれば読み進められる内容だ。大丈夫。わたしが十二分に楽しんでいるんですから。

マクロレンズマニアとしてはぜひ別冊を作っていただいて、どの結晶は何のレンズで撮ったか。という補遺が切望されるところ。ただ、わたしも石の写真を撮っていて思うところがあるのは「使用機材を前に出すとマイノリティ・マクロレンズクラスタが狂喜乱舞するが、純粋鉱物マニアには受けが微妙」というところがある。それでも…それでも…


A4サイズのフルカラー100Pで2000円というのはとてもサービスプライス。わたしのような石好きレンズ好きでなくとも、写真とエッセイを読むだけでその価値がある。じつのところ石の写真の価値とエッセイの価値は等しく、見開き2ページで美しく完結している。

商業ベースに乗っていない同人誌なので、強力にこれを手に入れてほしい気持ちが迸ってこのブログを書いている。同人誌は在庫がなくなれば再販するかどうかは微妙だ。石と同じで一期一会なところがあり、見かけたら買う。の精神が求められる。

「BOOTH」という通販サイトで2020年12月4日現在、今ならまだ初回特典に間に合う。これについては多くの人に見てもらいたいので全力で推す。専門分野の人が文と写真を自力で用意できるとこんなに面白くなるんだ、というのをわたしは知ってもらいたいんだ。

crystmuseum.booth.pm

 
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[この本のレベルで石を撮ろうとすると沼に入ることになりますけどね!!!!!1]