マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

Zマウントのマイクロニッコール「NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S」には大変満足だし猫様も満足だけれども満足のあまり猫目がきつい件について語らせてくれろ

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

ZマウントのMC105mmについてはWEBに作例が出回り出した頃に「これはすごい中望遠マクロだぞ」と脳天に響くものがあった。かつて、100mm域の民生用レンズでは感じたことのない、ただならぬ気配がどの作例からも漂っていた。

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

先代の「AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED」は、忌み憚かることのない私見を述べると、そこまで感性に訴えかけるものがなかった。花を撮った写真、猫を撮った写真、小物を撮った写真。さまざまな作例を見て、実際に試着して撮影してもピンとこない。けれどもZMC105mmはWEB作例を見ただけで買うことを決意させた。他の方はともかく、マクロレンズ好きのわたしに訴えかけるものがあったのだ。

猫の撮影について、これはもう文句なし。解像力のひ弱なレンズがいやがる猫の白いヒゲの周囲に色収差がつかず、なでやかにしなだれるヒゲの撓みのなまめかしさをなめやかに生々しく解像しつくしてくれている。これはもう猫…猫様を撮るために生まれたレンズなのでは…

stray cat

近接撮影時における倍率色収差と軸上色収差の皆無さは他のレンズの追随を許さないのでは。さらにピント面からアウトフォーカスにかけてのボケの自然さ。これがたまらない。

stray cat

こんなに素性よく、被写体のありのままを撮れるレンズなんて他にあるんですかねえ…

しかしこの下の猫様の写真を見ていただきたい。

stray cat

ある日のこと。突然こんなゴーストとフレアが。

バカな。ナノクリスタルコートとアルネオコートを施したマイクロニッコールだぞ…? これしきの逆光でなぜ…!? と思ったら、余っていたケンコーのスカイライトフィルターを装着したのがいけなかった。

すぐにスカイライトを封印し、MARUMIの「EXUS」という低反射率フィルターを装備してわかったことがある。逆光を撮るのであれば、フィルター運用は諦めるべきだと。フィルターを取っ払ってからは、逆光で困るようなゴーストフレアが出ることはなくなった。保護プロテクターがないのはやや不安だけれども、やたらと長いハレ切り効果抜群のフードを常時運用することを心がけた。

ニコン純正である「ARCREST PROTECTION FILTER」というのもあるけれど、これでゴーストを見てしまったら正気を保てないので、潔くノーフィルター。

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

レンズのビルドクオリティも素晴らしく、見た目に反して軽くて扱いやすい。最強のレンズだと思いきや、ピーキーなところがひとつあることを認めなくてはならない。口径食だ。

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点光源を撮影すると、画面の周囲に行くほど玉ボケが欠けていき、ついには猫目のようになってしまう。猫目、いいじゃないか。と思わなくもないのだけれども、これは一般的には美点とされていない。猫狂いのわたしでもそれくらいはわかる。

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大口径レンズ100mm前後の口径食なのだから、それは出て当然とわたしも思っていたが、これがけっこう気になる出方をする。上の画像のように開放撮影だと真円のボケは中央のごく一点。たとえAPS-Cクロップにしても口径食の発生が早く、避け得ることができない。撮影のときはこれを心がけておいたほうがいい。撮影距離でかなり具合が違う。

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幸いなことに見ての通りボケには芯やスジなどが入らないまったりとした光点として表される。玉ねぎや年輪のようなガサガサしたところがないのはさすがだ。

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さらに幸いなことは「実効F値がかかるようなマクロ域」において、この玉ボケの口径食はほとんど気にならない。よほど荒らそうと思って荒らさない限り、マクロ域でのボケは優勝が約束されている。

気をつけなくてはいけないのはバストアップくらいから全身を入れての中距離ポートレート。被写体を浮き出すために背景をぼかすポートレート域で木立を入れると口径食で枝葉が渦を巻くように写る。

民生用マクロレンズとしては世界で最も有能な100mm域レンズと断言できるが、ポートレートを撮影するとなるとただ一点、口径食のクセが強くピーキーだ。ということは頭の片隅に置いておいたほうがいい。

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マクロであれば手前に被写体。奥にイルミネーションでも、ボケ効果が大きいので猫目が気になるほどではない。が、マクロであれば絞りたいのが人の心。f/8まで絞ったのが下の写真。

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口径食の重力圏から完全に脱することもできる。パライバトルマリンのような美しい宝石のすだれがご覧いただけていると思う。

Zレンズに絞りはいらない。という方もいる。それは絞らずとも開放から画質が安定していて、各収差のくびきから脱し、絞りから自由になったプロレタリアの叫びにも似ている。

とはいえマクロ撮影には被写界深度が必要だ。ここは思い切って絞り込んでみてもZニッコールは大丈夫だよ。というニコンからもう一度絞りについて考えてみないかという絞りルネッサンスが問われているのかもしれない。絞ることも絞らないことも、撮影者自信がよしという具合に決めて撮ろう。撮影実存主義

NIKKOR Z MC 105mm f/2.8 VR S

 

==おまけ==

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いやがるZMC105をなだめすかして、LEDライトの上にMWSのJグレードプレパラートを置き、簡易透過光撮影。フルサイズ等倍、つまり撮像範囲長編36mmのマイクロニッコールにおよそ3mmの放散虫群を撮れというのだから、いつもの10倍の無理を強いている。上が等倍である最短撮影距離で撮ったもの。下がそれをトリミングしたもの。もちろん補正等は行っていない。

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Z5の画素数を軽く凌駕しているであろうピクセル単位の解像。等倍撮影のトリミングでもマイクロメートルの放散虫の輪郭を捉えている。画像全体に走る横筋はLEDが明るすぎるため、シャッタースピードが1/8000を越えてしまい盛大に出てきたフリッカー現象。これはLEDの特性なので仕方ないと思ってほしい。

 

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[でも【マイクロニッコール銘は残してほしかったなあ…MC…]