FoV=18mm
Sao Miguel de Piracicabe,M Gerais, Brazil
D610 / Bellows / FUJINON-M 1:5.6 f=63mm
フェナカイト。いや、ルースではなく鉱物標本なのでフェナス石といっておこう。
鉱物を紹介するとき、和名があるものについてはそれを用い、
ルースのときはできるだけ舌の上で心地良い響きのものを選ぶ。
わりと一貫していないが、わが石の紹介のルールだ。
というわけでブラジルはミナス・ジェライス州よりお越しのフェナス石さん。
頭がとろけがちなフェナス石にしてはよく結晶の様子が残っている。
Phenakiteはギリシア語の「Phenax=あざむく」を語源として、
かつては水晶と混同されていた故の名。というのは石オタであれば有名なエピソード。
確かに無色透明な様子はそう見えなくもないけど…
水晶のように整ったシェイプを持つ標本は稀。
硬度も屈折率もわずかに水晶より上。
水晶と決定的に違うのは、成長線が縦にも入ること。
けれどもルースにしてしまうと水晶と区別はほとんどつかない。
そういったところがマニア心をくすぐる。
ルースコレクターとしては水晶の上位互換なイメージがあり、
「無人島に持っていく石」に、この石を挙げるコレクターは多い。
わたしもフェナカイトのルースはかなり上位に番付をしている。
しかし標本はどうだろう。
整ったフェナス石の結晶標本は非情に稀で、
きっちり柱状でクリアーでシャープなものはなかなかない。
さらにそういうものが出ると、小さくとも万を軽く超える。
母岩付きならなおさらだ。
が、そんなこといっていても仕方がない。
鵜の目鷹の目で美品をお安く手に入れたいのは誰も同じ。
今ある結晶をつぶさに眺め、そこに美点を見出していくのがいい。
それを通じて養われるのは観察眼だけではなく、
石にやさしい人の心というものだろう。
FoV=9mm
D610 / Bellows / FUJINAR-M 1:4.5 f=5cm