1974年。キヤノンは二種類のかわいいマクロ専用レンズをラインナップした。
CANON MACRO PHOTO LENS 20mm f/3.5
CANON MACRO PHOTO LENS 35mm f/2.8
販売は80年代後半から90年代の初めまで行われていたようだけれども、2000年に入ると当時のカタログや書籍からは姿を消す。というのも、これはFDマウントのベローズ利用を前提として作られたからだ。
1987年からキヤノンはそれまでのFDマウントのほかに、次世代を見据えた電子接点を持つFEマウントに変更となった。FDマウントは併売されたものの終りが見えていた。
結論としてキヤノンはFDマウントを捨て去ることになるが、この二種のレンズについては素晴らしい機構を持たせていた。使用こそFDマウントを前提としていたが、レンズ本体はRMSマウントというネジマウントを持たせ、RMS→FDマウントと同梱して販売したことだ。
おかげでこのレンズは今の高倍率マクロ撮影者たちにも愛されている。
すでに初老ではあるものの、RMSマウントとしては最新のマクロレンズといっても過言ではない。しっかりと当時のSC(スペクトラ)コーティングを施されているし、先細りのデザインや絞りを動かすバーなど、使い勝手もよく考えられている。
とはいえ同時期、同様の高倍率専用マクロレンズを出していたオリンパスは、OMマウント用とRMSマウントの二種類四種類を販売していた。これは2000年を越えたあたりでも新品が手に入ったのは皮肉だ。
キヤノンマクロフォトは最新のRMSマクロレンズではあるものの、最後まで生き残ったRMSマクロレンズはオリンパスだった。遅かれ早かれRMSマクロは絶滅するのだが。
20mmは4-10倍の撮影設計で、凸凹凸4枚3群。中玉の凹レンズが貼り合わせ玉。絞りは6枚。
35mmは2-6倍の撮影設計で、4枚6群のダブルガウス。絞り羽9枚。
35mmの作例↓
20mmの作例↓
20mmも35mmも悪いところはない。強いて悪いところを挙げれば、20mmはベローズをあまり伸ばさず4-6倍くらいの運用が好ましく、35mmは2-6倍まで使えるが、その筋の人間からはなるべく低倍率側が好評だ。
さらにどちらも逆光耐性が強く、ハロゲン光の強烈な光でもカラーバランスが大きく狂うことがない。
唯一欠点らしい欠点は35mmの絞りが一段、二段絞ったところで星型の絞りになってしまうこと。せっかくの9枚羽なのだけれども、一番よく使うあたりでボケの形が悪くなる。20mmは6枚羽だれども、星型にはならない。いずれも円形絞りではないのは時代的に仕方がない。
この二本のレンズがあれば、フルサイズであれば18mから3.6mmの倍率をカバーできることになる。けれども、この手の高倍率マクロレンズは設計倍率の中でも低倍率付近。それもあまりベローズを伸ばさないほうがいいので、撮影環境にも依るけれど、高倍率は6mmくらいまでの範囲に収めたほうがいいかもしれない。
似た焦点距離を持つオリンパスのRMSマクロと比べて、キヤノンのマクロフォトは解像するという意味では優秀だ。
ではズイコーのレンズが悪いかというと、コントラストの乗りはズイコーのほうが。と思うことがある。わたしはマクロマニアであるつもりだけれども、必ずしも解像度だけでレンズを判断しない。もっと独断的で偏見に満ちた判断基準がある。例えば、ネーミングだったり、外観だったりする。
キヤノンのレンズに対してテンションが上がらず、ややもすると批判的になるのはここなのだ。名前がつまらない。ひどい理由だと思うが、これはもう個人的な好みなので仕方がない。
だけど安心してほしい。マクロレンズとしての性能は抜群に優れものだ。
[↑観音マクロフォトは外観はすごく好みです]
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