マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

等倍マクロレンズの至宝『Printing-NIKKOR』

等倍ほどの石の撮影のときに使うレンズの選択肢は多く、一般的なヘリコイドつきのマクロレンズだと50mm~105mm。カメラにベローズを装着するのであれば75mm~125mmあたりが狙い目になってくる。わたしは微動装置と撮影台とベローズを組み合わせたものを使うので、100mm前後の産業用マクロレンズを使うことが多い。

 

その数多い選択肢の中でベストの一本をと問われば、これ。『Printing-NIKKOR 105mm F2.8A』。
レンズの評価にはさまざまな要素があれど、プリンティングニッコールマクロレンズとして完璧。限られた用途において完成された一本だと断じることができる。

Printing-NIKKOR 105mm 1:2.8A

等倍付近であれば、どんな意地悪な撮り方をしても収差が出ない。白い物は白く、黒いものは黒く、細いものでも周辺に色ズレが出ずD850の4575万画で用いても高解像力を約束してくれる完全無欠のアポクロマート。それがプリンティングニッコール105/2.8Aというレンズだ。

 

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プリンティングニッコールには75/95/105/150の焦点距離があり、旧型の無印(N)と新型のAがある。無印とAの違いはレンズ外装には記載されていないので、見た目で判断する必要がある。無印とAではレンズ構成も違い、別物のレンズと思ったほうがいい。実際に使用するならAを狙うべき。また、75mmはわたしの知る限り歴史の表舞台で発表されたことはなく、カタログの中でのみの試作品なのではと思っている。誰か持っていたら写真だけでも見せて…

わたしの手元にあるのはプリン105/2.8Aのみであるけれど、これが一番手に入れやすい。次に95/2.8Aであるけれど、他の方の作例を見る限り95mmも基準倍率ではアポクロマートを約束されているようだ。完全対称レンズ構成の105mmはリバースしても倍率と写りは変わらないが、95mmはリバースでさらに高倍率を狙える。いずれかひとつ手に入る。という状況に陥ったら95mmを優先するのがいいかもしれない。

プリン105/2.8Aのいいところに戻ると、絞りの形がとてもいい。といっても深度合成の手段があればこのレンズは開放2.8。絞って一段の4までといったところ。一般的に産業用レンズは絞りの形によるボケの美醜に無頓着で、最もよく使う一段、二段絞りのあたりで絞り羽根の形が悪いことが多い。EL-NIKKORなどは開放でも絞り羽根の形がはみ出てボケに影響してしまう。

下の画像は一段絞ってf/4の状態だが良好な形といっていい。もちろん開放で絞り羽根は完全に格納されボケに影響はない。ここもプリンティングニッコールの美徳だ。

Printing-NIKKOR 105mm 1:2.8A

産業用レンズを使いこなすにはマウントアダプターを使いこなすことに似ている。幸いなことにプリン105/2.8Aはマウントのためにみっつのアクセス方法がある。ひとつは絞り輪直下のメインマウント「M45mmP=0.75」。もうひとつはフロントのフィルタースレッドに「M43mmP=0.5(メス)」。そしてフィルタースレッドを外すと出てくる「M45mmP=0.75(メス)」だ。プリン105/2.8Aは完全対称のレンズ構成なので、どちらがわでもマウントできれば性能を発揮できる。

わたしのオススメは「M45mmP=0.75→M52mmP=0.75」の変換リングを噛ませ、ニコン純正の「Kリング」を使うことだ。

「Kリング」はニコンF時代からある接写用中間リングで、今でもオークションで3000円しないで手に入る。中古カメラショップなどでは500円くらいで落ちていることもあるの。ただし、Kリング1セットでは延長量がやや足らず2セット必要だ。具体的には「K4」リング一本と「K5」リング二本。そして「K2」リングが一本。産業用のあやしいレンズをFマウントにして使うなら、KリングやBR-2Aといったアクセサリーは10セットくらいあると、いざというときの転ばぬ先の杖となることが多い。

最も手こずるのは「M45mmP=0.75→M52mmP=0.75」の変換リングだ。これはほぼプリン105/2.8A専用みたいなもので、以前は専用で旋盤加工できるところに発注するなど大変な手間だった。海外通販になるが、今なら『RAFCAMERA』などでまだ手に入る。いずれプリンを手に入れたいと思っている方は、むしろアダプタ枯渇のほうが怖いので今のうちに手に入れておくほうがいいかもしれない。下記リンクのものが該当品だけれども、自己責任はお約束。

これを組み上げればこんな具合にFマウントにすることができる。Fにさえできれば、あとはどうとでもマウントは変えられるだろう。

また前玉保護には古いEL-NIKKORなどに使われる43mmNIKONスプリングキャップがジョリーフィットするので是非。

Printing-NIKKOR 105mm 1:2.8A

あとはベローズに乗せるなり中間リングで等倍を出すなりお好きにどうぞ。よほど倍率が固定でない限りベローズの柔軟性は便利なので、産業用マクロレンズを使いこなすならば何かしらベローズに習熟しておいたほうがいいとは思う。

これで至高のマクロレンズが使えるようになる。といっておいて何ですけど、わたし自身あまりプリンティングニッコールを使わないようにしている。それはあまりに高性能過ぎるから。これに慣れてしまうと他のレンズを使うのがためらわれてしまうのではないか、という恐れから距離を置くようにしている。100mm帯のレンズにはいいものが多く、ベローズニッコールにベローズタクマー。マクロニッコールにAMニッコール。とミノンの105mmもいいし、選択の幅が多く楽しい焦点距離だ。

多くのレンズを楽しむため、あえてこのレンズに慣れたくない。そうまで思わされるほどのレンズに出会えたのは幸せなことだ。道に迷ったときに広げられる地図がある。そう思うことにしている。このレンズを扱う技量もまだまだなのだから。

最後に過去作例のリンクを貼っておくのでよろしければ御覧くださいまし。

 

 

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[RAFCAMERAはアダプタ沼なのでお気をつけて…]