マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

石好きによるルーペ紹介⑤『ZEISS Einschlaglupe D36(可変倍ルーペ)』

ZEISS Einschlaglupe D36

光学界、ライカとともに西の双璧。カール・ツァイス。そこのルーペであるからしてもう疑いの余地はない。それならば、光学の世界ではとかく微妙な評価が多い可変倍率のものにトライしてみよう。そうして買ったこのルーペ。これはとんでもない性能だった。

ZEISS Einschlaglupe D36

二枚のホルダーで三通りの倍率が得られるこのルーペは、それぞれ12Dと24Dの屈折値を持つ。ルーペで使われるこの「D」という単位はレンズの屈折力をあらわすドイツ語、Dioptrie(ディオプトリー)の頭文字で、メガネレンズなどにも用いられる。よくこの「D」を倍率と勘違いする方もいるが、それは間違いだ。ただし、D値を四分の一した数が、おおよその倍率と思っていい。ルーペにD40の記載があればそれは10x(10倍)のレンズだ。

このツァイスのルーペは12Dと24Dのレンズがある。それぞれ3倍と6倍である。そしてこれを重ねて用いるとD36。つまり9倍のルーペとなる。

これはなんと使いやすい… Φ20mm越えの広く明るいレンズ。可変倍率であるにもかかわらず9倍使用時の見え方はベロモ10倍のそれを越える。始めはノンコートかと思いきや、ごく薄くコーティングがかかっているのも効いているのだろう。さらに3倍、6倍それぞれのレンズで覗いてみると見え方のヌケがワンランク高い。これがヨーロッパ最高峰のルーペの見え方かと思わされる。

何度他のルーペと見比べても、コート由来の色変化もわたしには感じられなかった。こまったぞ。これには弱点がまったくない。

ZEISS Einschlaglupe D36

ここまで強烈な見え方をするルーペだ。プラスチックケースは賛否が分かれるところだろう。高級感のある真鍮を用いるべきだ。いや軽いアルミ製でも。けれども使うと樹脂製のケースも悪くない。なにより軽いし、運用するのであればこのほうがいいと思わされる。

とくに3倍と6倍のルーペが合わさる摺動部の造りがとても気密的だ。気密性があるということはその隙間から余計な光が紛れ込まないことだ。光学的にも重要視されるポイントだ。

惜しむらくは鏡筒の色。なぜここを白にしたのだろうか。古いツァイスのルーペはここがグレーのものがあり、このほうがコントラストに効くはずなのに、新しいものは白となっている。レンズの小端も塗っていない。どうもここが解せない。

それでもなお10倍付近のルーペでは最高峰の見え方をするのだから嫌味だ。ツァイスのことだから何かしら意味があるのだろう。と勝手に納得してしまうほどだ。

常ならば分解してレンズのコバ塗りをするところなのだが、レンズを外すためにはまずカシメを外し、樹脂部分のおそらくは接着されているところを剥がしてアクセスしなくてはならない。さすがに万を越えるルーペに不可逆の解像を施す度胸はないのだな、と笑ってくれ。

軽く、視野がとても広く、可変倍率で使い勝手がよく、肝心の解像力は極まっている。常用レンズとして引き出しに置いておくにはとてもいいルーペだ。これの10倍ルーペもあるのだが、わたしはこちらの9倍を押す。視野の広さが圧倒的だし、10倍の見え方はニコンの10倍と遜色ない。それならば10倍はニコンを推したい。もちろん異論はあるだろうし、私見であることはいうまでもない。

ところでこのルーペ。使用についてはいくつか注意が必要だ。観察方向に決まりがある。必ず「ZEISSマーク」側から覗き込むこと。これがトリプレットだとレンズ構成が左右対称なのでどちらからでもいいだが、可変倍率でレンズ構成が三枚二群となっているこのルーペは観察方向が決まっている。これだけは注意だ。

また、レンズのサイズが大きく樹脂製ということもあり、高温になる夏場。車のダッシュボードに放置しておくなどもよくない。ケースが熱で歪み、つられてレンズも歪む可能性がある。高性能ルーペを扱うのだから、これくらいの注意は必要だ。

ZEISS Einschlaglupe D36

【まとめ】
ZEISS Einschlaglupe D36(可変倍ルーペ/3、6、9倍)

レンズ径=20.5mm(実測)
重量=38g(実測)
全長=45mm(繰り出し前/実測)
厚さ=25.5mm(実測)
レンズ構成=三枚二群(二枚一群/一枚)

・観察しやすさ=97点
・解像感=97点
・扱いやすさ=95点
・耐久性=94点
・コストパフォーマンス=93点
・総合点:95.2点

 

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[可変倍でこの解像力はさすがツァイスとしか]