マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

石好きによるルーペ紹介④『京葉光器 リーフ TH-20 スリーレンズ 10x』

Keiyo-kouki Loupe TH-20 THREE LENS

Keiyo-kouki Loupe TH-20 THREE LENS

千葉県の拡大鏡の光学機器専門メーカー『京葉光器』。そこのミドルグレードの10倍ルーペがこちら。光学関連の専門でないとあまり聞かない名前かもしれないけれど、「LEAF(リーフ)」という典雅なブランド銘でルーペと拡大鏡の評価が高い。

このTH-20はやや大型の繰り出し、片持ちのルーペでハンドリングがとてもよい。筐体とレンズをイメージ留めるのがカシメなので、グラついたときのメンテにやや不安があるが、わたしが手に入れてしばらく使っていたけれども緩む気配はない。熟練のカシメ具合といっていい。

なぜこのルーペを紹介したかというと、レンズ構成の紹介をしたかったからだ。外装に「Three Lens」とあるのが見えるが、これはいわゆるトリプレットではなく、「三枚のレンズ」という意味だ。カメラレンズに詳しい方であれば「三枚三群」といったほうがわかりやすいだろうか。

実際にバラした画像をお見せするのが手っ取り早い。下が実際にこのルーペのレンズエレメントを取り出したところ。

Keiyo-kouki Loupe TH-20 THREE LENS

下ふたつの黒いリングはレンズとレンズの間を一定にして留めておくスペーサー。最後の黒リングはレンズを抑えるためのねじ込みリングだ。

このレンズは三枚の倍率が違う凸レンズを重ね、10倍ルーペにしている。同社の高級精密ルーペになるとこれがトリプリレット。三枚一群。凹凸凹を貼り合わせ、一枚にしたものが使われている。

ルーペに求められる解像力。そして周辺視野に起こってくる像の歪み。内面反射を抑えたコントラストの高さ。製造技術やコストなどを考え、ルーペでそういったものを解消するにはトリプレットが一番有効なレンズ構成といえる。

だからといって他のレンズ構成がいけないかというとそうでもない。世の中にはレンズが一枚だけのルーペや二枚のルーペ。さらに二枚を一枚にしてもう一枚足し「三枚二群」にしたルーペなどもある。それぞれにメリットデメリットがあるのだ。

ではこのスリーレンズルーペの何がいいのか? 安価で軽量かつ広視野のレンズが作れるのだ。

たとえば下の画像はトリプレットのベロモルーペ。レンズの厚みを見てほしい。これだけの厚みがあり、当然重さも違い、硝材の価格も変わってくる。スリーレンズの薄い凸レンズの重量やコストは強力な武器だ。

Strip Belomo Loupe 10x

リーフのルーペの有効ガラス径は19.5mm(実測)で、ベロモは19mm。観測できる範囲がとても広いわりに軽く薄い。これが効いてくる場面は必ずある。

とはいえ10倍ルーペの主戦場はトリプレットなのは間違いない。スリーレンズの10倍固定ルーペというのはあまり見ない。残念なことにデメリットも多く、三枚のレンズの間には空気の層があり、レンズ面それぞれが入ってきた光を内面反射して、結果としてコントラストが落ちる。像が白っぽくかすれて見えるのだ。

さらに一体成型でないということは、粉塵や水分の侵入する余地があるということだ。フィールドではスリーレンズのここが厄介で、寒暖差でレンズ内が曇った場合はまず観察できる状況ではないし、使用後はきっちりメンテナンスをして乾燥した場所に保管しないと内部結露が飛んでいかずカビの原因にもなる。

収差補正も取り切れないので歪曲収差で像の隅が糸巻き型に歪むのも目視で確認できるレベルだ。

Keiyo-kouki Loupe TH-20 THREE LENS

それでもこのレベルのルーペが3000円台というのは素晴らしいことだ。100円ショップのルーペや、ミネラルショーで500円ほどのルーペにはない視野と作りの良さがある。上の写真のような片持ちの繰り出しルーペは安物に多く見られるが、これは軽量化という視点で見ればとても合理的だ。本体外装はとても高級感のある目の細かいクロームの梨地加工のステンレス。ルーペ鏡筒は黒い陽極酸化皮膜処理をされたアルミ製。抑えるところはきっちり抑えている。

ミネラルショーなどでこのリーフのスリーレンズルーペを使っている人を見たとしたら「おっ、これは渋いルーペをお使いだ」と唸るくらいには通好みのチョイス。人気のベロモではなく光学の大御所ニコンやツァイスでもなく、あえて京葉光器のリーフ。しっかりと自分のスタイルがある人でないとなかなかこの選択はできない。

ルーペ本体についてではないけれども、付属のビニール製ケースがまたいい。形がチューリップ型で、本体を止めるバンドが斜めにスナップされる。「京葉」の「葉」をイメージしている形なのだろうか。それともチューリップ? これがただルーペ型のビニールケースであれば一顧だにしなかっただろうが、このデザインがとてもかわいい。この味わいをぜひ注目してほしいところだ。

Keiyo-kouki Loupe TH-20 THREE LENS

【まとめ】
京葉光器 TH-20 LEAF スリーレンズ 10x

レンズ径=19.5mm(有効実測)
重量=40g(実測)
全長=51mm(繰り出し前/実測)
厚み=11.5mm(公式)
レンズ構成=スリーレンズ(三枚三群)

・観察しやすさ=93点
・解像感=85点
・扱いやすさ=92点
・耐久性=90点
・コストパフォーマンス=90点
・総合点:90点

 

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