わたしはどちらかというと音楽について無頓着であり、外で音楽を聴くことはほとんどないし、家であっても3000円くらいのヘッドホンで満足しちゃうタイプ。というのも片耳の聴力がほとんどないので、人生常時モノラル音源で暮らしてきたから。
音楽~? まあ嫌いじゃあないけどどうせ聞くなら人間くらいある巨大スピーカーでズンズン鳴らすか生バンドで頼むよ~
的な贅沢をもって至高。家ではYouTubeがヘッドホンで聞こえればいいんです。くらいの認識。過去、1万くらいのちょい高いヘッドホンを買ったこともあるけれど、わたしの耳にはそれだけのお値打ちがあるか微妙。と断じて以後3000円前後をもって普段使いであった。
そしてこのたびのコビッド禍でヘッドホン装備時間が増え、なんなら通話機能も必要になってきた。となると耳の穴を何時間も密閉する不快感。コードがもさもさするモッタリ感。通話マイクが不明瞭なイライラ感が募りに募り、ひさしぶりの音楽デバイスを導入することとなった。それがこの『Shokz OpenRun Pro』だ。
骨伝導…ねえ。うん、わたしも十数年前に出始めた頃の骨伝導にロマンを求めて買ったことがあるんですけど、アレ。骨に音を伝えるパワー効率が悪くて耳元がムズムズするし、デバイスが発熱して不快だし高音ばかりがシャリシャリ伝わって低音不在だしで、音にこだわりのないわたしですら使用に耐えなかった骨伝導でしょ?
以前、そんなことをSNSで呟いていたら
「いや、今の骨伝導はかなりいいんですよ。AfterShokz(現Shokz)のエアロペックスは無線がすごく快適で音質はふつうのヘッドホン並みですよ」
とリプを受け取った。「快適で音質はふつう」という一文にそそられてから一年ほど。あの言葉を信じてShokzのフラッグシップモデルであるOpenRun Proを購入してみた。
結論からいうと最高だった。
中身は本体とベストフィットケース。充電器に各書類。
本体は思っていた以上に小さく、軽い。こんな細っそいツルで頭からズリ落ちないの~ と思ったけど、装着していることを忘れるフィット感。ワイヤーフレームは男の金属チタン。
この装着感が素晴らしく、休みの日は比喩抜きで一日中これをつけっぱなしにしている。わたしはメガネ使用だけれども、メガネとはまったく干渉しないのも素晴らしい。10時間駆動して、充電は一時間。しかもデフォルトで急速充電に対応していて、5分の充電で1.5時間の駆動。なにそのエネルギー効率。
調べてみたところ0%の状態から満充電まで約1時間。0%の状態から60%の電量まで約20分。0%の状態から90%の電量で約30分。こりゃすごい。この小さなバッテリーでそんなに。
充電方法は独自マグネット磁気誘導式。ここはUSB-Cだろ~ って思ったけれども、使ってみると超快適。いかに裏表のないUSB-Cであっても差し込みにはややこじって入れる感があるけど、マグネット式なら接点に近づけるだけでビタリ。そのぶん充電中のはずれやすさがあるけれど、これはこれで。ただしケーブルは一本しか付属しないので、予備ケーブルがもう一本あると安心かも。
ボタンは物理ボタンがみっつ。右耳方面に音量と電源、ペアリングを司るふたつのボタン。左耳に通話や早送りなどに対応するマルチファンクションのボタンひとつ。いずれも確かなクリック感があって頼もしい。タッチ式の頼りなさが好きになれないわたしにも諸兄にも姉貴にもよし。
OpenRun Proは「マルチペアリング」に対応しているのがいい。二台同時に接続できるのだ。どういうことかというと、PCで動画を見ながらスマホで通話できたり、スマホで通話しながらSwitchでゲームできたりする。これがとても快適。ペアリングも一度登録してしまえば自動でつながる。技術的なことはわからないけど、二台といわず3~4台くらいつながってくれると極楽なのだが~
Bluetooth5.1はタイムラグもわずか。わたしの所感だと0.3秒くらいのラグを感じるが、シビアなアクションの場合だと気になるかもしれない。だが、無線LANで対戦プレイをしているなら皆その手のラグは織り込み済みだろう。
左右の骨伝導の振動子には大メッシュが二箇所。あとワイヤーの根本に小さいのが一箇所。これがとてもいい。低音、中音、高音までまったりと聞こえてくれて驚くほど普通に聞こえる。高音ばかりキンキンしたり低音ばかりドンドンする、いわゆるドンシャリではない。少なくとも動画を視聴するぶんには必要十分な音質といえる。なんというか「小さなスピーカーが耳元でいい具合に鳴っている」感じだ。それなのに音漏れはほとんどない。わたしはいつもレベル50%くらいで聞いているが、15cmも耳から離すと音漏れは聞こえない。というレベル。よくできている。
耳を塞がないので環境音が聞こえるというメリットの性質上、これ以上の音質は難しいのかもしれない。事実、OpenRun Proをもっといい音質で聞きたいのなら手っ取り早い方法があって「耳栓をする」という技がある。これは不思議な体験なのでぜひやってみてほしい。
風呂上がり。このOpenRun Proを耳にサクッとかけて綿棒で耳の水分を取りながら動画を見たり、フリーハンズで会話しながら料理をしたりすることができる恩恵は素晴らしい。骨伝導であり、無線マイクヘッドホンというのがこんなにも生活を自由にしてくれるのかと。YouTubeの動画を聞きながらイスから立ち上がり、宅配の荷物を受け取りにいける気楽さは万人に受け入れられるべきだ。
マイクの感度も実用に足る。口元にマイクがないのでちょっと不安な気持ちになるが、しっかり会話を拾ってくれる。骨伝導なので音は相手に聞こえていないのもすごい。マイク特化したOpenMoveであればひそひそ声ですら通話できるだろう。
そして何より。方耳がほとんど聞こえないわたしの蝸牛に、わずかながら音が届いたことが嬉しかった。産まれて初めてステレオがどのようなものかがわかった気がする。おお、我が蝸牛よ。生きていたのか。知らなかったよ。
右から左、左から右に音が抜けていく感覚を楽しむことができた。ありがとうShokz。感激のおたよりをShokzに送らせていただいた。返信不要。そういうための用途ではないので、期待されても困るだろうから。
今のモデルが壊れてもたぶんまた買わせてもらうよ。骨伝導に幸あれ。
※中華の偽物が出回っているのでできれば正規代理店かプライム出品者から買った方がいいです。
あと女子だったらワイヤーが短いminiのほうがいいかも↓
[↑ショックスはいいぞ…]