マクロ☆スタイル

日常に高倍率マクロ撮影。鉱物標本写真/ルース。猫も撮ります。マクロレンズと産業用の変なレンズが多いです

ミノルタの引き伸ばしレンズ C.E.ROKKOR 或いは C.E.LENS

引き伸ばしレンズというのは本来、フィルムの画像に光を当て、フィルムによって作られた情報を余すことなく印画紙に焼き付けるための拡大レンズのことをいう。その思想は情報を損ねることなく忠実に拡大する――つまりマクロレンズだ。であるから、マクロレンズマニアにとってみて、引き伸ばしレンズというのは小型軽量なかわいいマクロレンズという扱いになっている。

今なお光学の最先端を走る本邦ではニコンの引き伸ばしレンズ『EL-NIKKOR』。そしてメジャーカメラメーカーの中で最後まで民生販売を続けたフジフィルムの『FUJINON-EX』などがハイエンドだ。

そして国産引き伸ばしレンズのもうひとつの雄。『C.E.ROKKOR』というレンズがある。
これはニッコールやフジノンよりもマイナーで、ラインナップも少ない。けれども素晴らしい光学性能で知られていて、通人の引き伸ばしレンズといってもいい。

今回は手持ちのミノルタの引き伸ばしレンズについて、あれこれ所感に触れていきたい。

MINOLTA C.E.ROKKOR(C.E.LENS)

MINOLTA銘の引き伸ばしレンズはいくつかある。しかし「C.E」とつけられたレンズはその中でも最高級のブランド。しかし名前の表記にいくつか特徴があり、手にするものを混乱させる。

・C.E.ROKKOR
・C.E.ROKKOR-X
・C.E.LENS

の三種類が知られている。国内で販売されたものが「C.E.ROKKOR」。そして米国向きに輸出されたものが「C.E.ROKKOR-X」。エックスがついているほうが明らかに強そうだけども、じつは違いはない。なぜ「X」がつけられたかはわからないが、輸出仕様というのはえてして謎の箔を付けたがるのだと思っている。

そしてロッコール銘が失われた「C.E.LENS」。これはミノルタが「ROKKOR」というブランドネームを放棄したため、このようなシンプルな名前になってしまった。そういうところに味わいを見出すマニアにとってみては悲しいことだけれども、いいこともある。C.E.LENSからそれまでのアンバーコーティングから、パープルのマルチコーティングが採用された。名より実を取りたければ「C.E.LENS」を使うのもいいかもしれない。

30mm f/2.8は変形ダブルガウス6枚5群。
50mm f/2.8も変形ダブルガウス6枚5群。
80mm f/5.6がオルソメター6枚4群。

基準倍率はマニュアル未所持なのでくわしいことはわからない。だが、色収差補正は380~700nmとEL-NIKKORなみだ。


MINOLTA C.E.ROKKOR(C.E.LENS)

MINOLTA C.E.ROKKOR(C.E.LENS)

MINOLTA C.E.ROKKOR(C.E.LENS)

シンプルかつすっきりとした外観。

MINOLTA C.E.ROKKOR(C.E.LENS)

うれしいギミックとしては「絞りのクリックあり/なし」と「絞り採光窓」がある。

上の写真のように赤ラインが見えているとクリックなしで無段階にスルスルと絞りを操作できる。

MINOLTA C.E.ROKKOR(C.E.LENS)

こうして赤ラインを隠すようにパチッと袴を上げると一段ごとの絞りクリック状態になる。無段階絞りは動画をお使いの方はいいかもしれない。

C.E.ROKKOR+Φ51→M52x0.75F Adapter+Nikon BR2A

「絞り採光窓」はレンズの後玉鏡筒とM39ネジマウントの間にあるスリットから光を取り込み、現在の絞り値が光るようになっている。暗室作業にはお役立ちの機能かもしれないけれど、順付けでレンズ遊びをすると光が迷い込み、コントラスト低下を招くので黒の毛糸やスポンジ、パーマセルなどでスリットを埋めておくほうがいい。なお、逆付けでマクロ撮影をする場合は迷光が入り込むことはない。

 

MINOLTA C.E.ROKKOR(C.E.LENS)

絞りの形はいい。きれいな六角形。上の画像で二段絞ったf/5.6となる。しかもEL-NIKKORやFUJINON-EXと違って、開放で完全に絞りが格納される。開放でのボケの形がきれいな真円となる点はミノルタの侠気を感じる。

しかしマクロマニアとしてはミノルタのC.Eレンズには致命的な欠点があった。
それは、フロントスレッドにネジが切っていないため、リバースマウントができないという点だ。テープでがっちり固定して使えば使えなくもないが、テープマウントはその場しのぎ。しっかりマウントできないと落下や光軸の歪みなどを引き起こす。

そこで登場するのが我ら謎レンズマニアの救世主『RAFCAMERA』だ。

RAFCAMERA Φ51→M52x0.75F Adapter

なぜそれを作った。といいたくなる「Φ51→M52x0.75F」のスレッドアダプタである。これをC.E.NENSの鏡筒の先に滑り込ませて、付属のレンチとイモネジで締め込み固定する。あとはM52にニコンリバースアダプタ「BR-2A」を噛ませればこの通り。

C.E.ROKKOR+Φ51→M52x0.75F Adapter+Nikon BR2A

そこで今回は EL-NIKKOR50/2.8N にモデルになってもらい、色収差がよくわかるよう白い銘板を上方斜め45度くらいの角度で撮影してみた。素性の悪いレンズでこれをすると白と黒の境界線上に色収差がもりもりと出てくる。このテストに100点を叩き出したのは「Printing-NIKKOR」くらいだ。

撮影条件はD850のAモード/ISO64/WBオート/絞り開放/RAWから無補正でjpg変換/三脚使用/ベローズPB-4の蛇腹を最延長で撮影。

[モデル EL-NIKKOR 50mm 1:2.8N]

EL-NIKKOR 50mm 1:2.8N

 

[80mm]⇔約18mm

⇔about18mm

[50mm]⇔約10mm

⇔about5mm

[30mm]⇔約5mm

⇔about10mm

という具合だ。それなりに色収差が乗っているのがわかる。80mmは倍率で一見きれいに見えるが、拡大するといけない色が出ているのが確認できる。

それでも引き伸ばしレンズの性能としてはかなりの性能だ。EL-NIKKORやFUJINON-EXと同等レベルだろう。このテストの条件がかなり意地悪いので、被写体を選べば十万戦力として使えるレベルといっていい。

ミノルタはその後コニカと併合し『KONICAMINOLTA』となり、その後カメラ部門はSONYへと売却された。そこで新たな潮流を築くのであるが、ROKKOR時代の古きよきレンズたち。そして引き伸ばしレンズが新たに産まれることはもうない。今あるレンズを大事に。かつ手厚く使っていってあげたいもので。

MINOLTA C.E.ROKKOR(C.E.LENS)

 

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[ROKKOR銘と無印だとケースのミノルタロゴが違うんですよ~]