VERDE D'ARNO (Limestone)
Toscana ITALY
FoV=130mm
2019年冬の浅草石フリマで「買う予定がなかった」石のひとつ。
一度見てほうと思って通過して、何か心がムズムズするのでもう一度この石のあるブースに来たら財布を出していた。実際に見て触るとすごい誘引力のある石。
それがこの不思議な模様を持つ石灰岩。『アルノーの緑』だった。
この石はイタリアはトスカーナ。フィレンツェあたりを流れるアルノー川で「取れていた」もので、特徴的な幾何学模様とグリーンの色彩が知られて取り尽くされてしまったという。実際そうなのかはわからないが、少なくともわたしはこれまで見たことがない石だったので、市場にほとんど出回っていないのは明らかだ。
日本有数のアゲート。ピクチャーストーンのコレクターである山田英春氏が、石フリマに「lithos Graphics」ブースを出し、イタリアのコレクターからの放出品。ということで破格の販売をしていた。
それは事前に話題になっていたので知っていたし、ぜひともトップコレクターの石をひと目見てみたいと思っていた。だが、わたしはあまりピクチャーストーンには興味を深めていなかったので油断していた。これはいいものだ…
知識人はこの風景をパウル・クレーの絵画のようだと評した。一方わたしは「学校のリノリウムの床に走ったキズ」というのが第一印象。ひどい表現だけれども、パウル・クレーを見たことがないのだから仕方がない。
これが人の手による模様ではなく、断層によって自然に走った模様だというからすごい。断層というのはもっと何十メートルという単位で特徴が出るものだと思っていたけれども、手のひらに乗るサイズで地球がむずがった様子がわかるとは。傷だらけのリノリウムの床といっておいて後から取り繕うようだけれども、ゲルニカのようでもある。
また色がいい。落ち着いたグリーンとオーカーがとりまくように、グレーの中心部を引き立てている。作為を感じるのに人の手が入っていない。
作為なき作為。ああ、この感動は初めて水晶の結晶に触れたとき。シャープなダイスのような立方体黄鉄鉱を見たときに受けた衝撃だ。この世の不思議と美しさを手にする喜び。石を集め始めたあのときの気持ちだ。
思わぬ記憶の扉が開いたのだから、財布が開くのも仕方がない。
おかげで今月の食費は切り詰めていかなくてはならないんですが…
[外食を我慢していたらその反動でたっかいバターとか買ってるし]